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すり替えのレトリック(第3回)

すり替えのレトリック:化学を無視した言葉遊び
「ゴキブリ駆除に使われるホウ酸は毒だが、掃除用のホウ砂は天然鉱物だから安全で解毒に効く」――。SNS上でこの危険なトレンドを推進する人々が、必ずと言っていいほど繰り出す主張です。一見すると説明のようにも聞こえますが、その実態は化学の基礎知識すら無視した、悪質な言葉遊びに過ぎません。

今回は、彼らが多用するこの「すり替えのレトリック」のカラクリと、その論理的な破綻を解剖します。

体内で起きる化学反応という不都合な事実

Section titled “体内で起きる化学反応という不都合な事実”

彼らは「ホウ酸」を悪者、「ホウ砂」を救世主のように扱い、巧みに両者を切り離そうとします。しかし、人体にどのような影響を与えるかという視点に立てば、この区別は意味をなしません。

ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)を経口摂取すると、人間の強力な胃酸(塩酸)と反応し、体内で一瞬にしてホウ酸へと変化します。「ホウ砂なら安全」と飲む行為は、自らの胃の中でホウ酸を作り出して摂取しているのと同義です。

どれほど誤魔化そうとも、体内に取り込まれた後、器官や組織へ及ぼすリスクや蓄積毒性は何一つ変わりません。「名前が違うから別物だ」という主張は、人体という生体反応を無視した欺瞞です。

なぜ「ホウ砂は安全」と錯覚したのか

Section titled “なぜ「ホウ砂は安全」と錯覚したのか”

彼らがこの欺瞞を押し通せる背景には、心理的なハードルを下げるためのイメージ操作が存在します。

「自然界に存在する鉱物だから体内の毒素を洗い流す」「食塩よりも安全だ」という嘘のアピールを彼らは連呼しています。しかし、自然由来の毒物など地球上には無数に存在します。

殺虫剤のイメージが強い「ホウ酸」に対し、洗剤やスライム作りで馴染みのある「ホウ砂」を持ち出すことで、毒物に対する心理的抵抗感を和らげています。

現代医療への不信を「言葉遊びの毒」で埋める危うさ

Section titled “現代医療への不信を「言葉遊びの毒」で埋める危うさ”

こうした論理破綻した説が広まってしまう根本には、過剰な投薬や強い副作用に苦しんできた人々が抱く現代医療への強い不信感があります。

さらに、ワクチンによる健康被害の広がりが決定打となり、既存の医療システムにしがみつけなくなった人々が救いを求めます。

そこへつけ込むのが、「あの危険なワクチンに早くから反対していた第一人者の医師が言うのだから間違いない」という誤解です。

反ワクチン医師やインフルエンサーは、たまたまワクチンの危険性を指摘し、当たりくじを引き当てたことで「何を言っても信じてもらえる」と増長しています。

適当に予言した大地震が当たっただけの占い師と同じです。それすら周りをキョロキョロ見回しながら他人のブログを盗用した情報が元ネタなのですから、呆れた話です。

ですが、「既存の医療界は、安価で優れた〇〇の真実を隠し、高価な薬品を売りつけている」という物語は、医療に裏切られたと感じている人々に魅力的です。

〇〇の中には「ホウ砂」「イベルメクチン」など、各々に都合のいい単語を入れて完成させるだけのテンプレです。

しかし、既存の医療に不信感があったとしても、その隙間を埋めるために毒物を飲み込むことは、自らの命や健康をさらに追い詰める結果にしかなりません。

彼らがやっているのは救済ではありません。言葉遊びを利用して危険な行為を正当化し、自らの影響力を拡大するための集金や自己保身・売名に過ぎません。いくら医師免許を見せびらかそうが、このような毒の飲用を嘘までついて勧める以上、彼らが化学や医学の素養・倫理を持ち合わせていないことは明白です。

次回は、こうしたホウ砂ブームが単なる健康オタクの暴走にとどまらず、人々の不信感を巧みに利用しながら拡大していく構造について踏み込みます。

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