重曹クエン酸水を「超える」(第8回)
比較という言葉の違和感
そもそも、食品添加物として広く使われてきた安全圏の物質と、洗剤や殺虫剤に使われる工業用化学物質を並べ、「こちらの方が上だ」と格付けすること自体が、支離滅裂な行為です。
それにもかかわらず、なぜ彼らは重曹クエン酸水を「超える」ホウ砂という、極めて歪な比較フレーズにこだわり続けるのでしょうか。
何が起こるか分からない得体の知れない方法へと置き換えさせる行為自体が、危険極まりない暴挙です。
今回は、この言葉に隠された発信者たちの見栄と、市場を丸ごと奪い取ろうとする強欲な戦略を解剖します。
既存の巨大な支持層を「横取り」する狙い
Section titled “既存の巨大な支持層を「横取り」する狙い”重曹クエン酸は、その安価さと手軽さゆえに、独自の健康法を模索する人々の間で広大なコミュニティを形成していました。後発でSNSに参入してきた医師やインフルエンサーにとって、このすでに出来上がった巨大な市場は喉から手が出るほど欲しいターゲットです。
ゼロから自分のファンを開拓するよりも、重曹クエン酸水を信じる巨大な層に向かって「それはもう古い」「それよりもっと凄いものがある」と呼びかけて不安を煽る方が、はるかに効率よく関心を引き寄せられます。
こうして既存の方法を捨てさせ、関心を横取りした上で、ホウ砂という過激な選択肢へ誘導し信者化させていくわけです。「超える」というフレーズは、新しい提案などではなく、先行するブームに乗っかって支持者を丸ごと横取りするための、ただのキャッチコピーです。
序列(マウント)への異常な執着
Section titled “序列(マウント)への異常な執着”本来、真摯に人の体調に向き合うのであれば、それぞれの物質が持つ性質やリスクを冷静に説明すれば事足ります。しかし、彼らが求めているのは効果の検証ではなく、「どちらが上のステージか」というマウントに他なりません。
彼らは重曹クエン酸に対して「誰でも知っている古い方法」「効果が薄い」といったイメージを植え付け、先行者の実績を矮小化して古臭い印象を与えようと画策します。
一方でホウ砂に対しては「限られた者しか知らない真実」「重曹を超える」と持ち上げ、禁忌を犯す優越感を与えながら自分へ依存させようとするのです。
「みんながやっている方法」を「初心者向け」と見下し、毒とされるホウ砂を飲める自分たちはさらに上の真実に到達したという歪んだ選民意識を植え付けることで、支持者の心をガッチリと掴もうとします。
「安価で手に入る良品」は商売の邪魔になる
Section titled “「安価で手に入る良品」は商売の邪魔になる”もうひとつ見逃せないのが、経済的な思惑です。重曹やクエン酸はドラッグストアで数百円で買えてしまい、発信者が間に割り込んで利益を得る余地がほとんどありません。
誰でも安く実践できる方法は、信者を囲い込んで高額サプリメントや特殊な装置、有料サロンへ誘導したいビジネス層にとって非常に不都合な存在です。
「重曹クエン酸では不十分だ」「ホウ砂やその関連知識こそが本物だ」と煽り立てることで相手の選択肢を狭め、最終的に自らの有料サービスや次の商品へと足を運ばせる導線を作っています。
「重曹クエン酸水を超える」という言葉から透けて見えるのは、人を救いたいという情熱ではなく、他人の作ったブームを横取りし、序列の頂点に立とうとする浅ましい強欲さなのです。
次回は、この強烈な対抗心の根底にある、先行者への「嫉妬心と競争心」という、人間臭くも醜悪な動機についてさらに掘り下げていきます。
